遅すぎた初恋
「今日は楽しかったわ。榊さん、我儘に付き合ってもらってありがとう。では、隆俊さん、また明日」
と、ゆかり様は自宅に着くと丁寧に挨拶をして車を降りようとした。
私は「とんでもない。こちらこそ」と会釈し、ゆかり様が降りられる姿をミラー越しに確認しようとした。
ところがその時、隆俊様が「榊、すまんが前を向いててくれ」と言って。降りようとするゆかり様の腕を、強引にご自分の方に引き寄せてそのままゆかり様にキスをした。暫し堪能した後、唇を離してゆかり様に、
「すまない。君と心が通じたんだ、これぐらい許せ。」
と妖艶な笑みを浮かべてゆかり様に囁いた。
「大人の男に生意気な態度を取ったんだ、これからは本気で行く。」と。

暫し放心状態だった、ゆかり様はみるみる真っ赤になって、「馬鹿じゃないの。いきなり大人の色気を出すなあー。このセクハラ男!」と言って隆俊様の大事な所を思いっきりグーパンチで殴った。

そのまま外に飛び出して、ドアを勢いよく閉め、あっかんべーをして屋敷の中に戻って行った。
私は悶絶している隆俊様を尻目に、肩を震わせ必死に笑うのを堪えた。
「…隆俊様、大丈夫ですか?」

「クソっ痛い。まともに食らった…。これでは先が思いやられる。」
「隆俊様が性急すぎるのですよ。もっと段階をお踏みにならないと、まだ、二十歳になってまもないのでしょう。」

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