遅すぎた初恋
朝食の片付けも終わり、各々が身支度に取り掛かった。

どうせ親族が集まるまでには、まだまだ時間があるんだと、弟を誘って二人で本宅に併設されている温室に行った。

弟の近況は、個展が無事に終わって、思った以上に反響があったお陰で、今度はニューヨークでも開かないかと誘われて、話しが進んでいるらしい。年明け早々に現地のスタッフに逢いに行くという事だ。

私の方は、都心部にまた新たな大型の商業施設やビルを建設する予定で忙しいという事、海外との業務提携の事だとか、あとは弟がいなかった間の会社の事業内容を話した。

弟が温室から見える空を見上げながら、
「本当、星羅のおかげでこうやって穏やかに暮らせているんだ。父さんや兄さんには悪いと思うけど、彼女と出会って自分の進むべき道を確信できたんだ。」

「華奢なんだけどね、生きるパワーはハンパなく彼女の方が強いんだよ。出会った時も色々悩んで弱ってた僕を、いつもニコニコ笑って励ましてくれる。年下なのに引っ張って行ってくれるんだ。」

「星羅を幸せにしてあげたいんだ。僕とは生きてく場所が違うからって何度も断られて、それでも大切にするからって、僕には君が必要だからって、おばあちゃん亡くして弱っている所に漬け込んだんだ。でも、どうしても僕は星羅じゃないとダメなんだ。星羅が欲しいと思ったんだ。」
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