遅すぎた初恋
ゆかり様は広高さんを生んだ後、十年経って、やっと隆次さんを授かる事が出来た。
「隆俊さんの体を考えても、もう無理かもって諦めてたのに、良かった授かって。隆俊さんも本当に嬉しそうなのよ。一人っ子は可哀想だし、お前も賑やかな方がいいだろって。ごめんな、本当なら三人ぐらい欲しかっただろうって言うの。お前が寂しくないようにしてあげたいんだけどなって。隆俊さんと広高がいるだけで十分なのにね。変な人よね。でも、この子が生まれくるのが待ち遠しいわ。」
と、どこか寂しく、でも本当に嬉しそうだった。
歳を追うごとに隆俊様のお身体は少しずつ悪くなっていくばかりで、広高さんはそれでも素直にお父上の跡を継ぐ為に必死に学業に専念され、大学を出る頃には既にお父上の片腕となり、その才覚を遺憾なく発揮された。
弟隆次さんは、お小さい頃から絵を書いたり、ピアノを習ったりするのがとても好きで、愛嬌があってとても可愛いがられていた。
それでも何かと周囲はお兄様と比較してくるので、ご自身は兄とは違う生き方を、と何か模索しながら過ごしてらしゃった。
結果として、お父上には反対されたものの、芸術家の道に進むべく進路をとられた。
息子達が各々の道を歩むべく舵を切ったのを、まだ道半ばではあるが、見届ける形で隆俊様はこの世を去られた。
「隆俊さんの体を考えても、もう無理かもって諦めてたのに、良かった授かって。隆俊さんも本当に嬉しそうなのよ。一人っ子は可哀想だし、お前も賑やかな方がいいだろって。ごめんな、本当なら三人ぐらい欲しかっただろうって言うの。お前が寂しくないようにしてあげたいんだけどなって。隆俊さんと広高がいるだけで十分なのにね。変な人よね。でも、この子が生まれくるのが待ち遠しいわ。」
と、どこか寂しく、でも本当に嬉しそうだった。
歳を追うごとに隆俊様のお身体は少しずつ悪くなっていくばかりで、広高さんはそれでも素直にお父上の跡を継ぐ為に必死に学業に専念され、大学を出る頃には既にお父上の片腕となり、その才覚を遺憾なく発揮された。
弟隆次さんは、お小さい頃から絵を書いたり、ピアノを習ったりするのがとても好きで、愛嬌があってとても可愛いがられていた。
それでも何かと周囲はお兄様と比較してくるので、ご自身は兄とは違う生き方を、と何か模索しながら過ごしてらしゃった。
結果として、お父上には反対されたものの、芸術家の道に進むべく進路をとられた。
息子達が各々の道を歩むべく舵を切ったのを、まだ道半ばではあるが、見届ける形で隆俊様はこの世を去られた。