遅すぎた初恋
「マスターにも散々反対されてね。中途半端なヤツに星羅をやれるかって。山にも一緒に登らされて、お前の覚悟はそんなものかーぁ。なんてわざと厳しいコース歩かされたりすんの。
星羅も一緒について来て、でも彼女は飄々として僕を置いて行くしさ。本当参るよね。

個展の話しが決まって、やっとマスターにも許されて、けど星羅がどうしても僕の家族に挨拶がしたいって言うから、人として道理は通さないとダメだって、門前払い覚悟でも会いに行こうって。
僕は反対されるのは目に見えてたから、じゃあ籍だけは入れて!ってそしたら連れて行くからって。
星羅にそれは順番が違うって言われたけど、渋々承諾してもらった。

母さんは何か彼女に通じるものがあるのか、すぐに了承して喜んでくれたけど、問題は兄さんだから、星羅は自分が兄さんから何か言われても黙ってて、って念押ししてくるし。
気が気じゃなかったよ。
先に浜で星羅を待たせて兄さんに会いに別荘に行ったら、散歩に行って居なかったしさ。

捜しがてら、星羅の元に戻ろうとしたら、兄さん彼女に怒鳴って、ジョンに襲わせようとするし、流石に殺意が湧くよね。でも、ジョンも懐柔されてて受けた。ウチの奥さん凄いなぁぁって。
兄さん応接室で星羅と二人だけで話した時、どうせ酷い事言ったでしょ?けど彼女なんにも僕には教えないんだ。基本、人の悪口は言わない。
凄い良い奥さんでしょ。愛してるんだあ。彼女さえいてくれたらそれでいいんだ。」
へへっと弟が笑いかける。


…完敗…だな…。認めるしかないか…。
「…良かったな、最高の奥さんに会えて。大事にしろよ…。」と言葉を絞り出す。
弟の幸せは心から望む。
だが…何故か心が冷える。いや何を考えているんだ。深くは考えるな…。
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