遅すぎた初恋
「凄いわ。星羅さん!さすがねぇ。大したものよ!痴漢を撃退しちゃうんだからぁ。
皆さん!良い余興でしたねぇ。それは一本背負い?それとも背負い投げぇ?クルって宙を舞ったわあ。やっぱり今のご時世、若いお嬢さん方は護身術は身につけておくべきよねぇ。ねぇ皆さんもそう思いますでしょ?」

周りは呆気にとられている、それでも母にゴマを剃ろうと、さっきまで男側に同調していた者達が口々に「凄いわねぇ」「素晴らしい、お嫁さんだ」などと手のひらを返し出した。

母はその様子を見て仰向けに転がっている男に、
「貴方のお家は残念だけど、お付き合いは無しにさせて頂くわ。だって私の大事な息子と娘を傷つけたんですもの…。
本当ならねぇ。お家もソレも私が潰したいくらいなんだけど。今日はお祝いの席だから、見逃してあげるわぁ!クリスマスプレゼントよ!。」

「あと、皆さんもねぇ。私がな〜んにも知らないって思ったら大間違いよ!
案外、人の心って分かる人には分かるものなんだから、バレてないって思ってたらぁ……。
後でとんでもない事になってるかもしれなくてよ。ウフッ。」

その発言に、その場に居た大人達は皆凍った。
「はい!ではお開きに致しましょう。ああ楽しかったわねぇ。新年会は何しましょう。」

と、去って行く母をそのまま凍って見送った 。

暫しの時を得て息を吹き返した者達がさっさと身支度を済ませて帰って行く。
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