遅すぎた初恋
転がっていた男も泣きながら一目散に帰って行った。
事実、本家と付き合いを絶たれた者は家を潰されたも同然だ。

あの男には悪いが、 見せしめには丁度良かったのかもしれない。これでごちゃごちゃ言う輩もしばらくは大人しくしているだろう。

どういっても、この一族の頂点は母だ。
母の逆鱗に触れれば命はない。


やれやれ終わったと思い、一通り客人達を見送った私は、今夜は自室でシャワーを浴びて寝ようと、部屋に戻りジャケットを脱ぎながら、窓から玄関先の庭にある、大きなもみの木に目をやる。

今年のイルミネーションも美しいもので、私でさえも心が和む。物心ついた頃から、庭師の吉爺が毎年張り切って装飾している。あの爺さん一体いくつだ?

ぼんやり眺めていると、もみの木の元に弟の妻が立っているのが目に入った。
寒い中、一人で何をやってるんだ?今さっきの出来事を思い出し、迷う気持ちもあったが彼女がなんとなく気になって、とりあえず寒くないようにコートだけ羽織って外に出る事にした。

玄関を開けると、スッと澄んだ空気に一瞬身震いした。今日は空気が澄んでいるから星も綺麗に輝いている。だんだんこの寒さを心地いいと感じながら、彼女の元に歩いて行く、イルミネーションを眺めるのに夢中なのか、こちらには全く気付かない。
「何をしている?」

急に話しかけたせいか、彼女の背中が大きくビクついた。
そのまま彼女の横に立つと、
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