遅すぎた初恋
「凄い綺麗だなぁ〜って思って。夢中で眺めてました。本当凄いですよねえ。都会のも綺麗だけど、ここの方がいいなぁって思います。吉爺さんが一生懸命飾ってたんで、ちょっとは私もお手伝いしたんですよ。まだまだだなって、言われちゃいましたけどねぇ。でも、今日忙しくて眺める時間なくて。なんとか電気が切える前にみれて良かったぁ。明日、吉爺さんに報告しないと!」

そう話す彼女の横顔をふっと見ると、キラッと光って頰をつたう雫があった。

泣いていたのか?やはりな。気付かないフリをして、
「隆次は?」

「えーと。隆次さんは多分お風呂だと思います。私は使用人さん達と一緒に片付けを手伝ってたんで、よく分かりません。っていうか私、片付け途中でほっぽり出して来てるんで戻りますね!」

そう言って明るく立ち去ろうとする彼女に、何か言ってやらねばと、
「君を、弟の嫁ということは認めよう。悔しいが、報告書にも問題はなかったからな。これからは弟をしっかり支えてやってくれ。」

「だが、忘れるな!私個人は君を認める気は全く無い。我々の不利益になるような事があればすぐに追い出す!覚悟しておけ!」
と憎々しげな顔を作って、彼女に向かって言い放つ。

「分かってます。いつでも容赦なく切ってください。それまではよろしくお願いしますネ!お義兄さん!」

とペコっと頭を下げる。
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