遅すぎた初恋
彼女が苦しげに小さく呻く。それでも目覚める様子はない。

ハッと彼女から身を離し、後ずさる。
手の甲を自分の湿った唇に押し当てる。

何をした⁉︎私は…⁉︎。
何が起こった⁉︎
何が……⁉︎何が……⁈

自分の唇に残る甘い感触に触れながら、その場を立ち去った…。

急な仕事が出来たと。書斎の片付けもそぞろに、慌ただしく邸を後にした。

自宅でシャワーを浴びながら、劣情を催した体を沈める。

だが、己の欲を出しても出してもおさまらず、艶めかしい感情がまた身体中を支配して行く。
彼女の柔らかなくちびるを思い出し。
また、猛々しく狂っていく。

欲しい彼女が…星羅が…欲しい…欲しい…欲しい…。奥底に秘めた欲望がドス黒くマグマのように沸き上がる。

こんな思いは、今までなかった。
制御された世界。制御してきた世界。
あんな小娘にまんまと崩されるなんて。

触れてしまえば…認めてしまえば…後は思いが溢れるばかり。

好きだよ。好きだよ。星羅。
あいしてる。あいしてる。愛している。

思ったところで無理な話しだ。
願ったとしても、叶わない。
認めたところで、苦しいだけだ。
彼女は弟の妻だ。横恋慕だ。
思いを伝えるなんて、一生ありえない。
早く閉ざしてしまわないと。

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