遅すぎた初恋
「あと、隆次さんの遺産は私は放棄します。出来ればどこかに寄付して頂きたいと思います。絵の管理もお義兄さんの方でお願い出来ますか?」

「わかった。君がいいのなら、その通りにしよう。」
少しは瞳にも色が出てきたか?彼女の様子をまじまじと見る。

「飯は食べているのか?」

「はい。」

「少しは落ちついたか?」

「まだまだですが、少しずつでも前には進んでいかないと、とは思います。お義兄さんには色々とご迷惑をおかけしました。」
と、少し微笑んで頭を下げる。

「いや。何もしていない。ただ居ただけだ。」
「ところで、落ち着いたら、山にはまた登り始めるのか?」

「ん…?。そうですね。まだ、当分は無理かもしれませんが。」

と、何故か一瞬お腹に手を置いて、少し考えるそぶりを見せて答たえた。
何か引っかかる…何かが…。

「それにしても、凄いコレクションですね?ライカやニコンFもある。あっD fもある!っていうか、こんなにカメラ必要ですか?全部使ってます?撮ってます?
なあんだ、山にも登られるんですねえ。そんな素振り一つもしてませんでしたよね?人が悪い。本当ビックリです!知らなかったあ。」

と、彼女は飾り棚を見たり、本棚を見たり歩き回っている。
< 31 / 115 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop