遅すぎた初恋
「まあいい。そうだね。自分が歩んで来た道には揺るぎない誇りはあるね。
親から譲り受けた会社や社員や家族を守っていく責務を自分は担っている。
だったらちゃんと果たさなければならないし、全うしているとも思っている。目に見える結果だってちゃんと出してる。
だけどその反面、自分の事はおざなりになっている。だから他人に私自身の事を伝えるのはとても勇気がいる。自分でも理解してないんだ。人に上手く伝わる訳ないだろ。
憧れている人は遠くから眺めている方が楽だ。」

「なんか寂しいですね。」

「寂しいか…あまり考えた事はないな。」
「…じゃあ…、私が寂しいと言えば、君は同情して私の妻になってくれるか?」

「…………⁈」
暫し固まって沈黙…。
「…。」
さらに沈黙…。

「……なっ…なんですかっ…急に⁈おっしゃっている意味がわかりません!」

「そうか?弟の未亡人をその兄が娶るなんて、昔からある事だ。珍しい話じゃない。君がこのまま私の妻になれば、君の生活は現状維持だ。いや、それ以上の物を与える事ができる。悪くない話しだろう?」

「でも、お義兄さんは高柳家の家長ですよね。その妻になる方はお義母様のように身元もしっかりしている方じゃないといけないのだと、私も思います。同じ身分の?少なくても私は分不相応ですよね。それはお義兄さんもずっと仰っていた事ですよね?」
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