遅すぎた初恋
榊が報告書を持って来た。それにサッと目を通すと、私の思った通りだ。
時間を見れば、17時。今から行けば捕まえるには良いタイミングだろうと、榊と共に会社を出た。

アパートの前で彼女が来るのを車の中で待っていると、女性が一人こちらに向かって歩いて来る。間違いない星羅だ。すかさず車から出て、声をかける。
「星羅!」

一瞬何が起こったのか分からずに驚いた顔でこちらを見ている。
「えっ…と…。お義兄さん?」

「急にどうしたんですか?もしかしてお義母様がどうかされたんですか?」
と、私達の方に近づいて来た。

「いや。君に急ぎの用件があって来た。」

「悪いが、ここではあれだから。中に上げてくれないか?」

「あっ…。はい…。わかりました。どうぞ。」
と、外階段を上がり二階の彼女の部屋に入った。
狭いが中は掃除が行き届いていて、女性の部屋とは思えないくらい簡素なワンルームだった。

ベッド横に置かれたテーブルに案内され、榊と二人で座る。
星羅も二人分のお茶を運んできて、向かいに座った。
「すいません、今お茶しかないんです。」

ひどく申し訳なさそうに言ってくるので、榊も私も、
「お構いなく」
「いや、かまわない。」
と、出されたお茶に一口つけた。

「で…あのぉ…ご要件とは…?」
と、訝しげに尋ねて来るので。

「ああ、その前に。こっちが秘書の榊だ。父の代から付いている。」
と紹介すると、榊が、
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