遅すぎた初恋
「お見かけはしていたのですが、ご挨拶するのは初めてでいらっしゃいますね。先代からお世話になっております。榊です。」

と優しい笑みを浮かべて挨拶をした。

すかさず星羅も、
「はじめまして、鈴白星羅と申します。狭苦しいところですいません。」
と、恐縮しながら挨拶をした。
穏やかな眼差しで榊が見ている。
そのやり取りを見終えて、私は彼女に向かって問いかける、
「私が、ここに来た理由に心辺りはないか?」

彼女は「なにも。」と頭をふるう。
ふぅーっと私は溜息を吐き、少しイラっだった表情で、もう一度同じ質問を投げかけた。答えは同じ。では、
「君は妊娠しているだろ?なぜ私に隠した?バレないとでも思ったか?」

彼女は瞠目して、言葉を詰まらせる。
「あっ…なっ…⁈…な…ぜ?……」

「違うのか?妊娠は今でニヶ月といったところか?」

ここに至っても逡巡する彼女に、とどめをとばかりに榊がサッと報告書を取り出してテーブルの上に出す。私がそれをスッと彼女の前まで進めた。
それを見た彼女は、
「し…。調べたんですね?ちゃんと分かったのは最近なのに…いつから…?」

「そうだね。書斎で君と話した時の様子が少し気になってね。一瞬だったが、腹に手を当てた気がして、君は無意識のようだったがね。それが凄く印象に残った。その頃から榊に動いてもらっていた。」

「悪いが、君には高柳家に戻ってもらうぞ。」

「お、お断りします。この子は私の子です。自分で育てます。」

「悪いがその子は君だけの子じゃない。君と隆次の子だ。そして高柳家の血を引く子だ。ちゃんとした環境の中で育てる。」
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