遅すぎた初恋
そう畳み掛けてたち上がり彼女の腕を取った。
「嫌いです。お義兄さんなんか嫌い!」
と彼女は涙を浮かべてこちらをキッと睨みつける。

「知っている。言いたいことはそれだけか?
担がれたくなければ立て!いくぞ!」

力無く立つ彼女を引っ張って玄関を出る。

「いい人だと思ってたのにぃ……。」

「そうか。それはご期待に添えなくて悪かったね。」

彼女を乗せて、自宅のマンションに向かう。車内で星羅は声を殺して泣きじゃくる。
こちらが悪者なのだから慰める訳にもいかず、ただその姿を見ているだけしかなかった。
自宅のマンションに星羅を連れて行き、事前に呼び寄せておいたトキさんと榊に彼女を預けて、彼女が働いている喫茶店に車を走らせた。

喫茶店に着くと、札はクローズにはなっていたが、電気はついていたので構わず店内に入った。
カウンターの中には堅いはかなり大きな初老の優しそうな男性が立っていた。

「すいません、お客さん、もう店は終わりなんです。」
と申し訳なさそうにこちらに呼びかける。

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