遅すぎた初恋

私は少しの間応接室を離れ、母に連絡を入れた。

母は挨拶をしに来た段階で、結婚は了承したらしい。彼女をとても気に入ったらしく。

私が、「何処の馬の骨か分からない女を一族に加えることなど許されない。」と言うと、「時代錯誤だわ！」「頭の硬いおっさんね！だから弟に先を越されるのよ。悔しかったら自分もさっさと結婚してみなさいよ！。」など、矛先を自分に向けられる始末で、半ば呆れた私は、「わかった。お母さんが良いなら認めるよ。」と電話を切った。

応接室に戻り、苦虫を噛み潰した表情で、
「私自身は到底認めたくはないが、既に母の了承済みならば仕方がない。
但し、条件がある。今のアトリエは引き払って、実家の敷地内にある別棟に暮らしてもらう。
私は、仕事でほとんど都内のマンションにいるから、自分に代わって母の世話をしろ。もちろん彼女にも喫茶店での仕事は辞めてもらう。
あとは、一族を招いてお披露目だけはしてもらうからな！
こちらとしてはかなり譲歩しているんだ。嫌とは言わせない。あと、少し彼女と話しがしたいから、隆次は先に出ていろ。」

と、有無を言わせず弟を応接室から出て行かせ、彼女を見据えた。