遅すぎた初恋
今度は奥さんが私の方に向かって。

「あの子は私達にとってかけがえのない娘です。母心としては…あの子を高柳家に嫁に出すのは正直言って嫌でした。身分違いの子がいけば周囲から何を言われるか分かってましたもの。だからと言って隆次君と引き離すのも不憫で…隆次君が絶対に守るというから、あの子を嫁に出したんです。向こうのお義母様は大層可愛いがって下さっていたようで安心はしていましたが…でも、隆次君が亡くなって…。うっぅぅ…。」

と涙に言葉を詰まらせながら。海堂さんが奥さんの背中を優しくさすっている。

「でも良かったです。これからが大変でしょうが、隆次君の子供が授かって。本当に…本当に良か…ぅった……ぅ。」

「ねぇ、貴方。星羅さんをここに引っ越しさせましょう?これからは色々と体調も変わってくるだろうし、一人にしておくのは心配よ。」

「ああっ、そうだね!そうした方がいい!明日にでも、星羅と話をしてみよう。」

とご夫妻で楽しそうに「じゃあ、あの部屋を片付けてそこに…。」などなど星羅を住まわせる段取りを話し始めた。
私はそんな楽しげなご夫妻に水をさす形で、

「申し訳ありません。その事なのですが…。彼女は高柳家で面倒を見ます。」
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