遅すぎた初恋
「確かに、星羅さんは高柳家とは縁を切って出ています。一族の意向もありましたが、彼女自身も、それを望んで出て行く事になった。
私の母はかなり引き止めましたがね…。
ですが、私は彼女の些細な行動に疑問を感じ、出て行った直後から行動を見張らせていました。
そして、今回妊娠が明らかとなり、行動に移らせて頂いたまでです。」

「………。」

「私はあくまでも一族の長として、あの時は皆の意見に、または彼女の意向にも従った。躍起になって彼女を追い出したつもりもありません。
縁を切ったと言われても、彼女が困った時には断られるでしょうが、いつでも助けるつもりではいましたからね。
星羅さんは、良くも悪くもしっかり育てられたお嬢さんだ。だから他人になかなか弱身を見せない。それは自分が心を許した人に対してもです。
先では分かりませんが、今回の件も今の段階ではご夫妻になにも話しをしていない。
たぶん話を知ったところで、彼女を一緒に住まわせようとしても、なかなか首を縦には振らないでしょう。」

「………。」

「 おかしな話しと思われるかもしれませんが、私は今回彼女を甘やかしたいのです。
他人に甘えるという事が出来ない彼女を。遠慮と謙虚さを履き違えている彼女を。今まで頑張って来たであろう彼女を。
本来ならそれは弟の役目であったと思いますが…それが叶わない今なら弟に変わって私が…と思い暴挙に出ました。」

ご夫妻はまだ怒ってはいたが、黙って話を聞いてくれている。
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