遅すぎた初恋
「私は…彼女に我儘を言える場所を作ってあげたいのです。」

そう言い終えて真っ直ぐご夫妻を見る。暫く海堂さんは黙って何かを考えてはいたが、諦めたように、
「…分かりました…。全ての行いを納得する事は難しいですが…今回は広高さんにお任せしましょう!」
奥さんは「あなたぁ」ともちろん納得がいかない感じだが、「まあまあ」と海堂さんが宥める。

「それにしても、面白いですね。
貴方は星羅をよく見てらっしゃっる。
関わってきた年月は私達の方が遥かにあるのに、全く気付きませんでした。
どういうきっかけで分かったんですか?」

私は書斎での事を端的に話した。

「なるほど、そんな些細な事でわかるものですかね。それは社長職から来るものですか?それとも…。」

と彼は意味ありげに私を見る。私も意味ありげに微笑み、
「さあ。どうでしょうか?確かに職業柄人の機微には敏感かもしれませんね。素早い洞察力が無ければ務まりませんから。」

「広高さんには勝てませんね。お若いのに流石は大企業の社長さんだ。
でも、貴方も星羅とよく似ている。
いや、貴方の場合はそれ以上ですかね。背負っている物が我々とは遥かに違う。
貴方は本当に自由が許されない環境で育って来ている。だから自分を殺すのには慣れておいでだ。」
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