遅すぎた初恋
「で、どうやって弟に取り入った?性格は知らんが、容姿は少しばかりは良いようだ。それともアッチの方で弟を骨抜きにしたのか?」

「………。」

「若いのに末恐ろしいものだな。金持ちを捕まえてこの先何不自由なく暮らせるものな。母にも早速取り入って好い気なものだ!」

「………。」

「だが、私は騙されないからな!この家にお前のような卑しい血を入れる訳にはいかない!お前が唆しさえしなければ、弟にはそれ相応の女性を見つけ、相応の立場を与えるつもりだったんだ!お前がどういう女か調べ上げてやる!そしてボロが出たら直ぐに追い出してやる!」
と、彼女を罵った。

黙って聞いていた彼女は憤慨する訳でもなく、怖れる事もなく、ただ静かに私を見つめて、言葉を発した。
「お義兄様がお怒りになるのは、至極もっともな事で反論の余地もありません。私と彼とは生まれも育ちも違いますし。到底共に人生を歩む事など無理な話しだと断って来ました。
ましてや自分に何の魅力があるかなんて考えた事もありません。ですが、隆次さんを私は深く愛してます。それはお義母様やお義兄様に勝るとも劣らず、彼を深く深く愛してます。
歳は少し離れていますが、一生懸命な所。少し不器用な所。子供のような無邪気な所も、彼が兼ね備えているもの全てを、私は心から愛しています。卑しいと思われても構いません、どんなお怒りも私が全て受けます。
ですが…私は彼と離れて生きる事は考えられないのです。お義兄様のお気持ちは分かりますが、これだけは譲れません!お好きに調べて頂いて結構です!でも…今だけは見守って頂けませんか?」
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