遅すぎた初恋
私が倒れた日を境に、星羅も大人しくなった。
不満はあるようだが、私への態度も軟化させ、今はトキさんの手伝いをして掃除をしたり食事を作ったりしている。
悪阻は酷くなるのかと思っていたのに、マシになって来たようで、今は御飯もいっぱい食べるようになった。

母も榊経由で事の成り行きを知っていた為、最初は私に鬼畜だ!犯罪だ!と散々喚いていたが、今はまだ生まれもしない孫に服やらおもちゃやら買い漁っているそうだ。
マンションには絶対に送ってくるなと言うと、じゃあ早く星羅に合わせろと脅して来るので、週末実家に帰ることにした。

久々の再会に母が大泣きしたので、流石に星羅も狼狽えて「ごめんなさい。お義母様、ご心配をおかけしました。」と一生懸命慰めていた。

隆次を亡くし、星羅までも失った母は本当に抜け殻のようになっていたのだから、恥じらう事無く星羅に抱きついて、ワンワン無く姿は無理も無いと思う。
少しは星羅にも反省してもらいたいものだと、母が泣き止むまで側を離れるなと命令しておいた。

暫くして母も落ち着きを取り戻し、わんさか買った子供服やおもちゃなどを星羅に見せている。
キャッキャ、キャッキャと少女のように笑って星羅に自分の子育て体験談を語り出した母に半ば呆れて、私は書斎に上がって行った。
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