遅すぎた初恋
書斎で仕事をしていると、コンッコンッとノックをして星羅が「お義兄さん入って良いですか?」と聞いて来たので、「ああ」と声をかけると、嬉しそうに入って来た。

「どうした?何か嬉しい事でもあったのか?」

仕事を片付けながら聞く私に、星羅が、

「私この部屋好きなんです!入れるって思うと、すごくワクワクするんです‼︎すごくすごく好きです‼︎」
と星羅にしては珍しく、鼻息荒く力説してくるのが可笑しくて。
思わずゲラゲラと大笑いしていると、星羅がキョトンとしてこちらをマジマジと見つめてくるから、こちらも急にバツが悪くなって「なんだ?」っとぶっきらぼうに言い放った。

「お義兄さんでも、声を上げて笑う事ってあるんですね!いっつも眉間にしわを寄せてこんな難しい顔してますし、笑ってもすぐ真顔に戻るから、そういう笑った顔ってなんか新鮮ですね!」

と私の、眉間にしわ寄せた顔を真似して見せて、「もう一回笑って下さいよ。どうやったら笑います?ねっ、ねっお義兄さんもう一回笑って下さいよ」と座っている私に変な顔をしながら近づいて顔を覗き混んでくる。
私は堪らず、「近いっ!」と彼女の顔を掴み引き剥がした。
無邪気もここまで来ると罪だな。
こっちの気も知らずにコイツはと、私の手に覆われているせいでフガフガやっている彼女を見つめて、冷静を取り戻すのに努めて「少しは元に戻ったようだな?」と声を掛け手を離した。
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