遅すぎた初恋
星羅にお腹を冷やさないようにと、念の為に防寒をさせ。
カメラを下げて、薔薇園や別棟を抜け、林の奥に入って行く。

その奥には、大きな銀杏の木が何本か立っている場所がある。
そこは、落葉がいく層にも重なって金色の絨毯を織り成していた。

星羅が「綺麗!綺麗!きれいい!」と叫んで金色の絨毯めがけて走って行くから「こらぁ!走るな!」と叫んで追いかける。バサァバサァと掻き集めては上に放り投げ、掻き集めては放り投げるを何回も繰り返している。「本当犬だな」と思ってその光景を写真に収める。

木漏れ日がスポットライトのように彼女を浮き立たせて金色の葉が舞い散る様はこの世の者とは思えない美しさだ。
レンズ越しに見えるのは外見だけの美しさではなく、前に誰かに言われた通り内面から溢れでる美しさも併せ持っている。
ああ綺麗だ。本当に堪らないな。

「お義兄さんも一緒にやりましょうよ。面白いですよ」と誘ってくるので、わんさか落葉を掻き集めて彼女目掛けて思いっ切りかけてやった。「酷い!」と応戦してくるが、身重な上に体格差もあるから、結局勝てずに諦めて拗ね出す。

「お義兄さんは卑怯だ!か弱いのに手加減しない卑怯者だ!暴力反対!だから立たないんだぁ!」と最後に聞きづてならない事を言ってくるので、クワッと怒る真似をすると、彼女が「きゃーっ」と行って逃げだそうとする。

だが、少し躓いてグラっと転げそうになった、急いで庇って彼女諸共倒れ込んだ。下がふかふかで良かったと思い。上に重なっている星羅に向かって「だから、走るなって言ってるだろうが!大丈夫か?」と声を掛けると、反応がない。
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