遅すぎた初恋
と、促してくる。
返事をしない私に「ねっねっ」とまたまとわり付き出したので、「わかった!わかった!わかった!だからまとわり付くな!」と距離をとった。
本当に勘弁してくれ。さっきから反応して収集がつかなくなりそうなんだからと、やり場のない気持ちを密かにぼやく。「母親よ。だから私は役立たずではない!」とも。

邸に戻ると、玄関で母が仁王立ちして待っていた。

「二人ともどこに行っていたの!心配するでしょ!広高!星羅ちゃんには大事な大事な赤ちゃんがいるのよ!分かってるの!それをこんな時間まで引っ張りまわして、何考えてんのよ!
貴方ねそんな暇あるんだったら、見合いの一つくらいやりなさいよね!この役立たず!」

と、かなりのご立腹だったので、これ以上長居をすればせっかくの休憩と思ってやって来たのに、精神的にも下半身的にも身が持ちそうにないので、「じゃあ、帰る」と回れ右をしてサッサと逃げ出した。

後ろで母が「トキさん塩撒いといて塩っ」と叫んでいるのを聞きながら、車に乗り込む。と、「お義兄さん足早いです!」と星羅が追いかけて来て「今日はありがとうございます!」と頭を下げて来た。「またな。ほら冷えたらまた、母に私が怒られるから…戻れ。」と手を伸ばして頭を撫でた。邸に入って行くのを見届けてから、車を発進させ都心に戻った。
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