遅すぎた初恋
これでは、星羅にも海堂さんにも会えないと一人机に突っ伏して「つかの間の私のオアシスが…」と悶々としていると、「早く仕事して下さいね。溜まってますよ。」と「だからゆかり様に負けるんですよ。」と容赦ない言葉が上から降って来るので粛々と業務をこなした。

それにしても、もう12月かと思いふける。本当に色々あった…。本当に…。本当に。

暫し窓に立ち、夜景を眺めていると。「また、今日も徹夜決定ですね。」とゆったりとした笑みを浮かべて榊が入って来た。
「はい。はい。わかった。わかったよ。やればいいんだろ。」と渋々机に向かうと、「これを」っと榊が数枚の写真をスッと私に見せて来た。
「望じゃないか?どうした?」と榊に尋ねた。望は叶の兄で隆次よりは二歳上になる。
それがどうした?と写真を見ると、邸の庭で星羅にデレデレっとして話している様子が写っている。もう一枚見ると肩に手を回したりしているものや、何かをプレゼントしているもの、最後は温室でうたた寝している星羅にキスしようとしているところが写っていた。

最後に目にした写真は、自分にも見に覚えがあるものなので敢えて目に入れず、込み上げて来る仄暗い物を感じながら榊に「どういう事だ。」と努めて冷静に聞いた。
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