遅すぎた初恋
と、呟いて一向に顔を上げない。
今日は髪を結い上げているから、髪をぐしゃぐしゃとは出来ないしなと、彼女をまじまじと観察しながら、妊娠して女性らしい体つきになって、なんとなくアンバランスな感じがまた男心を煽る気がする。
今日は絶対に顔を出しては駄目だと言い聞かせてきた、欲望が沸き起こりそうになる。
仕方ないな。秋から全く会って居ないのだから、そりゃあ無理もない話だと、自分を慰める。

星羅はパタパタと手で自分の顔を仰ぎ出すから「暑いのか?何か飲み物でも。」と一緒にオードブルや飲み物が置いてあるテーブルに行った。

色々と二人で選んでいると不意に後ろから「やあ、広高さん、ご無沙汰してますね。」と星羅の次に心から会いたかった人に話しかけられたので、ちょっと緊張して、声が上擦りそうになるのを必死に堪え、顔を作って。
その人に向きなおった。

「海堂さん、こちらこそご無沙汰しております。何ヶ月か前の星羅の送り迎え以来ですね。
こちらには何度か来て頂いているそうですが、なにぶん、仕事が忙しく足が遠のいておりまして、なかなかお会い出来ずに申し訳ありません。」

「いやいや、ほんととんでもない。お母様には星羅だけではなく我々夫婦にも心遣いを頂いて、こちらが申し訳ないかぎりですよ。なあ。」

と奥さんにも促す。
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