遅すぎた初恋
やはり海堂さんを目の前にすると、昔からの憧れやら尊敬やらで、緊張してしまう。
そんな私を毎度、星羅が鬼の首を取ったかのように見ている。
さっきまで赤くなっていたのに、落ち着いたのか、例のごとく、したり顔でこちらを見ている。
「マスター、お義兄さんは私にはかなり意地悪な事を言うのに、マスターにはよく見せたいからって凄くいい人ぶるんです。
だから凄く尊敬してるから、これでも凄く緊張しているんですよ。」

「星羅さん、少し黙ろうか?」と笑顔で言えば

「そんな顔しても全く怖くありませぇぇん。
いつもいじめられているので仕返しです。
でね、マスターお兄さんてね、マスターの切り抜きまで持ってるんですよ。私この前発見したんですよ。結構古いのもあってね。それと一緒に…ふんがっ……。」

今度は後ろから抱えこんで、手で二度目の口塞ぎ。

「いい加減にしろよ。鍵を返してもらうぞ!」

と耳元で囁いてやった。またボフン!と赤くなっている。茹で蛸か?今日はいつにも増して面白いヤツだな、と思い離してやると、口をパクパクさせている。今度は鯉だな。
そんなやり取りを見ていたであろう海堂さんが、突然大笑いしだした。私と星羅は顔を見合わせ何事かと目をぱちくりさせた。何もツボにハマるような事はしていないはずだ。
< 69 / 115 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop