遅すぎた初恋
「いやあ。君たちは良いコンビだね。本当に息がぴったりだ。実に素晴らしいものが見れて私は嬉しいよ。
広高さんが最初に我々に挨拶をして来た時は、なんて横暴な男だと憤慨していたが、あの時、言った事を有言実行してくれているんだね。
星羅もすっかり君に甘えて、我々では引き出せなかった表情を見せてくれる。それは君もまた然りかな?
隆次には悪いが君たちの方が写真に綺麗に収まる気がするよ。いやあ、本当に楽しい。いいプレゼントを貰った気分だよ。ありがとう。」

と去って行った。すれ違いざま「挨拶はいつでも大歓迎だよ。でも、一度君の性根を見てみたいから、今度山でも一緒に登ろうか?」と何故か意味不明な嬉しいような、怖いような、言葉を私の耳元に残して。
私は何か怒らせる事をしたのだろうかと、かなり落ち込んでしまった。

それでも、久々に憧れの海堂さんと話しが出来た事に感動し、喜びを噛み締めていると、心底殴り飛ばしたくなるような邪魔が入った。

「広高君、あまり感心しないなあ。こんな公の場で弟の未亡人と戯れあうなんて。ほら、見てみなさい、皆んなが興味深げに見ているじゃないか。
ただでさえ、星羅さんはいろんな意味で目立つのだから。君は離れた方がいい。
どうかね。今日は私の知人の娘を君に紹介しようと、連れて来たんだ。他の親族も皆似たように君を紹介したいと思っているんだよ。なんてたって君は我々一族の頂点に居る人だからね。」
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