遅すぎた初恋
「君は隆次君と立場が違う。そうだろう?世間に変な噂でもたったら困るだろう。本当に隆次君も変な女に捕まったものだ、どうせ色仕掛けだろ?そういえばこないだ、誰かが彼女に迫ったらしいじゃないか?大きなお腹をして男を引っ張り込むなんて、その子も隆次君の子なのかわからんね。」

と、星羅を見下した顔で見ている。

星羅は俯いたままで聞いている。表情は見えないが手に取るように分かる。
私はワナワナと怒りが込み上げバァッンと拳でオードブルが乗っているテーブルを叩いて、目の前の男を睨みつけた。
周りが一斉に静かになる。
星羅が「お義兄さん、やめて。」と私の腕を掴む。「大丈夫だから母の所に行っていなさい。」と掴んでいる手をポンポンっとして母の元に促した。

男はなおも何か言いたげだが、私の圧に負けて言葉にはならない。

「聞き捨てならないですね。星羅は大切な弟の妻だ。という事は我々の大切な家族でもある。
その家族を侮辱するにはそれ相応の覚悟があって言っているんだろうな。
貴方達はなんの根拠があって、星羅を蔑んでいるんだ?家か?血か?
確かに、隆次が結婚すると言った時には、私も調べましたよ。
でも、彼女には酷い言い方をするが、結果は幼い頃に親を亡くし、身寄りは母方の祖母しか居ないという不幸な状況だけだ。
学生の頃の成績は常にトップ。進学を勧められたが、祖母の体の事もあって断念。アルバイト先の喫茶店のマスターがプロカメラマンでその人に師事してカメラを習う。その間、弟に会って、結婚。何に問題がある?」
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