遅すぎた初恋
「家の格式、血なんてものは、たまたまそこに生まれたものが手にしたに過ぎない。
我々の祖先は元々は地方の貧しい下級武士だ。別に高貴な生まれでもない。その人がそれこそ蔑まれながらも、汗水垂らして働いて起こした事業を、今日我々が胡座をかいて継いでいるに他ならない。
親から与えられたものにしがみつき、自分は選ばれた者だと錯覚し、優越感を得たいが為に他人を差別する。醜い限りだ。
高貴な流れを汲む血なんてものはある一部分の限られた人間の話しだ。

私も貴方もただラッキーなだけだ、先祖のように努力をしなくても、勝手に与えられるだけだからな。
だが、潰すも繁栄させるも、その時その時の者の力量だ。
悪いが、貴方にはその力量がない!経営は火の車じゃないか。貴方は高柳という名にしがみついているだけに過ぎないだろう?
他人を蔑む前に己の無力差を恥じたらどうだ?
どうせ私に知人の娘でも当てがって上手く取り入ろうと算段でもしていたのか?私も舐められたものだな!」

「………。」

「世間が噂をするだと?誰が噂をするんだ?
貴方だろ?そんなものは誰かが世間に面白おかしく尾ひれをつけて流さなければ変な噂なんて立たないだろう?
それに仮にそんな噂が出たとしても結構だ!
星羅は私が守る!
私は彼女に会って己の醜さを知った。
見せかけで他人を判断し、その本質を知ろうとしない私の浅はかさを知った!
私は彼女に救われた。
いい機会だ。この際だから言っておく。
今後彼女を傷つける者は私の持てる力を持って全力で叩き潰す!
私に向かってくる者は、私に潰される覚悟を持ってかかってこい!」
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