遅すぎた初恋
辺りは水を打ったように静まり返っていた。誰も音を立てない。
男は完全に私の怒気に晒されて、今にも失禁しそうな様子になっている。

その静寂を破ったのはあの人の大きな笑い声。

「いやあ。本当に素晴らしい方ですね。広高さんは。この方に任せていたら高柳建設はまだ次の100年続く会社になりますね。良い方が跡を継がれてらっしゃる。」

と海堂さんが拍手をして言ってくれた。
それで場が和んだのか、皆が拍手をして。
頑張ろう次の未来に、そうだ頑張ろう心を入れ替えて、など至る所でスローガンが掲げられている。

失禁しかけの男はいつのまにか消えていた。
後日改めてこの倍は締め上げてやると思いながら、母と星羅の元に向った。

さっきの男の話しの内容から判断して「お母さんの仕業ですね。今日やたらと人が多いのは?」と聞くと、いけしゃあしゃあと 、

「あらなんの事かしらん。だって。見合い写真が山のようになっていくんだもの。ゴミはいつまでも置いておけないでしょ?だから手っ取り早く貴方に片付けて貰おうと思って。」

「いいじゃない。綺麗に片付いたんだし、しかもほら、変な噂も立たなくて済んだじゃない。星羅ちゃんの虫も蹴散らせたんだし、めでたしめでたしよ。ねえ。」
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