遅すぎた初恋
と、優しく背中をさすってやる。星羅は堪えられなくなったのか「なんでお義兄さんは…。」「ふぇん…うくぅ、うわあぁぁ…。」と泣きだした。「ほら泣け、もっと」と、抱きしめて声を掛け続けてやる。
どれくらい時間が経ったのか分からないが、少しは落ちついてきたようで、「もう大丈夫です。ありがとうございます。」と彼女が離れた。その温もりを名残惜しく思っている矢先。

「みぃちゃた。みぃちゃった。こんな寒空に何いい雰囲気になってんの?
なんで星羅ちゃんの横に広高がいるのさ。
お前がなんでナイト気取りな事してるんだよ?俺は駄目でなんでお前ならいいんだよ!
ねえ星羅ちゃん僕は君を一目見た時からずっとずっと好きだったんだよ。知ってた?
僕はね。隆次にも顔が似てるんだ。だから隆次の代わりになれるよ。ねえ僕を好きになってよ。」
と、酒に酔っている望が星羅に近づいてくる。

今日はこんなのばっかだなと毒付きながら、「何をやってる?お前は出入り禁止だろ?」と望の襟首を掴んだ。

「なんだよ!広高!どけよ!いっつもいっつも僕の前に立ち塞がって。僕は星羅ちゃんに会いにきたんだ!お前はいいよな!本家の息子でしかも長男で、何時もちやほやされて。僕はお前と比べられて、いっつも惨めで。
隆次だってお前を兄に持ってつくづく不幸だよな。挙句に死んだ後は、お前に星羅ちゃんをかっさらわれるんだからな。死んでも死に切れないだろうな!」

私は、「いい加減にしろよっ!」と望を殴った。
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