遅すぎた初恋
その言葉に何を思ったのか、星羅が「何か怒ってますか?」と言って、私の側に寄って来た。「私何かしましたか?」と不安げに聞いてくる。
その目はやめろ。と彼女を見ながら、「怒ってもいないし、何もされてないから大丈夫だ。」と優しく言ってやる。
それでも「何か思ってますよね?」と私の顔を食い入るように見ながら言ってくるから、

「私から離れなさい。今は酒も入っているし、私も男だ。身重でも君を襲うぞ。」

と脅した。
だが、星羅は笑いながら、

「そんな事お義兄さんはしませんよ。」

「何故わかる?そんな事分からないだろ?」

「お義兄さんはしません。」

「………。」

「だって、お義兄さんはいい人だから。」

「いい人ね…。」

彼女を見ながら、君は何も知らないからね。

私がした事も私が君に抱く欲情も。
私の中でふつふつと怒りが込み上げる。
なんだか、馬鹿らしくなって、今度は、鼻で笑う。
私のその様子に星羅は少し首を傾げる。

「いい人ね…、君は私の事を分かってないよ。私はいい人ではない。君だって、私が無理矢理マンションに連れて来た時に言ってたじゃないか。」

「だって、あの時は状況が状況だったから、そう言いましたけど、でも、私は、お義兄さんの事、本当にいい人だと思ってます。」

そう言って、星羅は射抜くように私を見つめてくる。
そんな目で私を見るな!煽るな!
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