遅すぎた初恋
星羅はあの後、すぐに母によって奪取された。せっかく、星羅の気持ちが分かったんだから、もう少し一緒にいさせてもらってもいいだろう。と恨めしく思う。

星羅は私が倒れたと聞いた後、直ぐに忽然と姿を消したらしい。「予期はしていたのよね。行き先は分かって居たからいいけど、臨月だし事故に遭うしで、さすがに肝を冷やしたわよ。
自分より若い子が逝く辛さは、もう味わいたくないわ、それが我が子なら尚更ね。
まあ、おじさんなのに星羅ちゃん守って、よく頑張ったわね。」と母が言っていた。

当たり前だ、私だって愛する人間はこれ以上失いたくない。

星羅が来てくれた、自分から望んで私の元に。酷い事をしたんだ、もう望みはないと正直諦めていた。
マンション前で見つけた時は、幻だと思った。
助けようと、道路に出た時は死んでもいいと思った。
病院で言われた言葉に、舞い上がった。
星羅に抱きつかれた甘い感触が蘇る。
本当に離してやらんさ。
やっと、腕の中に落ちて来たんだ。愛して、愛して、愛して、私なしでは生きれないようにしてやる。


それから数日して星羅が赤ちゃんを出産した。男の子だ。皆が隆次の生まれ代わりだと言っている。顔も隆次そっくりだ。名前は隆海と書いて「たかひろ」だ。弟にも私にも関連する名前で、星羅が考えた。

可愛い、本当に天使だ。
これからは、私がお前を守るからなと一人で呟く。

さあ、星羅にプロポーズしないと。
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