遅すぎた初恋
毎年恒例のクリスマスパーティーの用意はもちろん母の号令と共に一族の嫁やら使用人が粛々と進めていく。

今年からは毛色の違った人間が一人加わった。
最初は好奇な目で見られてはいたが、母の力強い後ろ楯がある為、誰も文句や陰口は言わず、何事もなく平和に終わったらしい。
明日はパーティーだ。

私も粛々と仕事を片付け、自分の車で実家に戻った。

久々に会う母からは、弟の妻の「良くできた嫁」という評価を延々と聞かされ、自分はどうなんだ!どうするんだ!このままではお父さんが可哀想だと詰め寄られる始末で、親類縁者から母の元に預けられた一塊のお見合い写真を押し付けられ、この中から誰でもいいから選べ、早く決めろというのを、なんとか誤魔化し自室に逃げ込んだ。

愛し、愛される結婚…。

自分には到底無縁だ。今までそんな感情など持ち合わせては来なかった。人並み以上の容姿と環境のお陰で女性にはこれといって不自由はして来なかった。
仕事の邪魔になる女は容赦なく切り捨てて来た。

自分にはこの家を次に繋げる使命がある、この家に、自分に、十分釣り合う女性ではないといけないのだ。
見合い写真の女性は全て一定の条件はクリアしているのだというのは理解できる。だが、何故か二の足を踏んでしまう。何処かに希望を見い出してしまう。

「愛しています。」彼女の瞳を思い出す。
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