遅すぎた初恋
まだ、お疲れ気味の星羅を連れて、本宅に顔を出せたのは、昼過ぎだ。母からは「いい年越えた、おっさんが若い子にガツガツしてみっともない!」と至極もっともなご意見を頂いた。
今は隆海が星羅にべったりだ。少しの間だったが独占していた手前、なんとなく近寄りがたい。
二人の姿をソファに座って微笑ましく見ていると、隆海がハイハイをして私の足元にやって来た。
どうした?と見つめていると、私に向かって抱っこのポーズをとってくる。そのままフワッと抱きかかえてやるとキャッキャと嬉しそうに手足をバタつかせる、背中をぽんぽんとしていたらそのまま寝てしまった。かわいいな。
「あらー。お父さんって認識されてよかったじゃない。」と面白くなさそうに母が言う。「当たり前だろ。俺がこの子の父親なんだ。俺以外には誰もならさせない。」と言ってやった。

マンションは引き払って、生活の拠点は実家にした。のんびりとした環境の方が隆海にもいいだろうし、母も本心では星羅と隆海を手放す気はないのだろうから。
今は、毎週末には喫茶店を休みにして、海堂さん夫妻もやってくる、いずれは別棟に住む話しにもなっている。

母が「アンタが浮気して星羅ちゃんと離婚する事になっても、追い出されるのは広高、アンタだから」と言っていたが、それは絶対絶対絶対にない!海堂さんに抹殺される!それよりも星羅以上の女がこの世にいる訳がないだろうが! 私の方が星羅に愛想を尽かされないように必死なのに!と心の中で叫ぶ。
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