遅すぎた初恋
「あのね、赤ちゃん。お父さんとはねえ。ここで初めて会ったんだよ。すっごい怖かったんだよお。ジョンに襲わせようとするしねぇ。女性にする事じゃないわよね。」

と思い出したくない事をお腹の子に向かって言っている。
私は苦笑いを浮かべる。隆海は眠たそうに、私の肩に頭をのせている。

「でもね、素敵なお父さんなのよ。お母さんやお兄ちゃんやあなたを守ってくれる、カッコいいお父さんなのよ。ハンサムだけど、性格はひん曲がって、可愛くないし、暴君だし、年寄りの割にはガッついて大変だし。だけどね、本当に愛情深い素敵なお父さんなの。」
途中酷い言葉を並べ立てる星羅を軽く睨んでやる。
へへへっと星羅は、はにかみながらそのまま言葉を紡ぐ。
「お母さんね、幸せなのよ。広高さんと出会えて。そしてね。隆次さんに会えて。本当に良かったて思うの。私を無条件に愛してくれる人達に囲まれるって、とっても素敵な事よね。私ね、本当に深く深くお父さんを愛してるのよ。」

と、お腹に囁きながら、私に微笑んでくれる。

「私もだよ、星羅をを深く深く愛してる。そして隆海も生まれてくるこの子も。ありがとう。私を愛してくれて。そして初恋を叶えてくれて。」

手を伸ばして星羅の頰をさすり、そのまま唇に触れ。自分に引き寄せ深いキスを落とす。

寝落ちしていたはずの隆海がむくっと起きて、親のキスシーンをじっと見てる。横目でそれを見て、しまったと思ったが、隆海が私と星羅の頰にチュ、チュとしてきた。
私達は唇を離し、顔を見合わせ、今度は隆海の両頬にそれぞれキスしてやった。

隆海は「たぁた。かか。しゅき!」と抱きついてくる。

ありがとう。隆次。必ず、必ず二人を幸せにするから。見守っていてくれ。
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