遅すぎた初恋

隆海さんの下に生まれたのは、女の子だった。星羅さんにそっくりで、本当に愛らしい。
名前は「怜羅」さんだ。

広高さんは、まだ生まれたての赤ちゃんに向かって、「絶対嫁には行かせん」と息巻いている。
周囲はドン引きだ。私はコイツはつくづく馬鹿だなと心底冷たい目で見てやった。
ゆかり様も、同様に冷たい目を向けている。

でも、良かった。広高さんの初恋が実って。一歩間違えば、人の道にそれる事態だ。
叶わない思いの辛さは少しは理解できる。だからこそ、叶えられた広高さんを本当に良かったと思う。
そんな、苦い思いを抱くのは私だけで十分だと、親バカっぷりを、傍迷惑なぐらい振り撒いている広高さんを見て思う。

ゆかり様も家族が賑やかになって、本当に良かった。
旦那様である先代社長の隆俊様を失って、隆次さんを失って、お辛さはいかばかりか。
ゆかり様の不意に見せる、寂しいお顔に何度胸を締め付けられる思いがしたか。

だが、ようやく幸せそうに、心から笑われるようになった。

良かった、良かった、お幸せそうで。
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