遅すぎた初恋
「だから、これからは真剣にお見合いなさいよ。きっと貴方が幸せだったって言える相手が見つかるはずだわ。政略結婚でも、努力次第で愛し愛される関係だって築けるわ。だから、頑張ってくださいね!じゃ、この話はなかったという事で。どうせ断られるんだから、こっちから断らせて頂きます。」

と、最後を締め括って。脱兎の如く逃げて行ったらしい。

隆俊様含め、その場に取り残された者は皆呆気にとられて、暫く動けなかったが、隆俊様がゆかり様のご両親にこの話を進めてくださいと伝えたそうだ。

ご両親はとにかく「娘の躾が行き届きませんで。」と平謝りするばかりで、かえって申し訳なかったなと、思い出し笑いをしながら言っていた。隆俊様が心から笑われるなんてなかなか拝見できない事なので、私も幸せな気分になった。

ゆかり様か…どんな方なのだろう。

だが、隆俊様は乗り気なのに、ゆかり様は「私は断った!」の一点張りで、隆俊様は強行突破で家に押し掛けるようになった。

「榊、どうしたものか。こんなに女性に夢中になる事なんてなかったのに、ゆかりの事を考えるだけで、柄にもなくドキドキしている。大人の余裕を見せたいのに、彼女を目の前にすると、何も言えなくて。何しに来たんだーって切れられるんだ。」
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