遅すぎた初恋
やがて見合いから二ヶ月に差し掛かるある日、私に取って何十回目のゆかり様宅訪問だっただろう。
私は例の如く、車で待機していた。すると、どこからか、「ちょっと。ちょっと。」と女の声がする。私はどうせ空耳だろうと、運転席で本を読んでいた。だがその時、ボトッと車のボンネットにサンダルが落ちて来た。
なんだ⁈と思って、車から出ると塀の上から声がする。
「ちょっと、助けて。思ったよりも高くて降りられないのよ。」
と、声を潜めて私に話しかけて来た。
女性とは認識できるが、顔は影になっていて確認できない。私は仕方ないなと思って、助けることにして彼女に「ほらっ」と手を伸ばした。
こちらはそろそろと降りてくると思っていたのに、彼女は私が下に来たのを確認するや否や、「えいっ」と、私めがけて飛び降りて来た。
予期せぬ降り方に思わず、彼女を抱きしめる形でそのまま尻餅をついてしまった。ふわっと甘い良い香りが私を包む。
少し堪能してしまったが、パッと離れて、「危ないなぁ!それでも女性ですか?」と声を張り上げそうになったのを、彼女がシッーッとして、私の口を塞ごうとする。
「ちょっと、声が大きいって。今から隠れようとしてるのに。ちょっと静かにしてよ。」
なんなんだ、この女性はと訝しんで見ていると、
「私は、橘ゆかりよ。この家の娘よ。で、貴方はどなた?」
私は例の如く、車で待機していた。すると、どこからか、「ちょっと。ちょっと。」と女の声がする。私はどうせ空耳だろうと、運転席で本を読んでいた。だがその時、ボトッと車のボンネットにサンダルが落ちて来た。
なんだ⁈と思って、車から出ると塀の上から声がする。
「ちょっと、助けて。思ったよりも高くて降りられないのよ。」
と、声を潜めて私に話しかけて来た。
女性とは認識できるが、顔は影になっていて確認できない。私は仕方ないなと思って、助けることにして彼女に「ほらっ」と手を伸ばした。
こちらはそろそろと降りてくると思っていたのに、彼女は私が下に来たのを確認するや否や、「えいっ」と、私めがけて飛び降りて来た。
予期せぬ降り方に思わず、彼女を抱きしめる形でそのまま尻餅をついてしまった。ふわっと甘い良い香りが私を包む。
少し堪能してしまったが、パッと離れて、「危ないなぁ!それでも女性ですか?」と声を張り上げそうになったのを、彼女がシッーッとして、私の口を塞ごうとする。
「ちょっと、声が大きいって。今から隠れようとしてるのに。ちょっと静かにしてよ。」
なんなんだ、この女性はと訝しんで見ていると、
「私は、橘ゆかりよ。この家の娘よ。で、貴方はどなた?」