副社長は今日も庇護欲全開です
彼を見ると、表情は硬いまま、それでも私から視線を動かさない。その雰囲気から、とても直哉さんが誤魔化そうとしているとは思えなかった。

「結婚は、父が進めている話に過ぎなく、俺にその気はない。中途半端な状態なのは分かっているが、それを話してしまったら陽菜の心を奪えないと考えてしまった……」

苦悩な表情を浮かべる直哉さんは、私に向かって頭を下げた。

「な、直哉さん!? なにをされるんですか?」

さすがに戸惑った私は、彼の肩にそっと触れる。頭を上げてほしい、そういう意味だったけれど、直哉さんは頭を上げなかった。

「きみを傷つけてしまったのだから、自分の判断は間違っていた。どんなことをしても、信用を取り戻したい」

「そんなに自分を責めないでください。私、そこまで思っていません。びっくりしましたけど、こうやって話してくれたじゃないですか」

そう言うと、直哉さんはやっと顔を上げてくれた。そんな彼に、私は小さく微笑む。

「陽菜の優しさには救われるよ。きみを、できるなら巻き込みたくなかったけど、父に紹介したいと思う。いいか?」

真面目に私を見つめ、真剣に言ってくれた直哉さんに胸は高鳴った。

「嬉しいです……。でも、お相手の女性は、大丈夫なんですか? 納得されないんじゃ……?」
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