副社長は今日も庇護欲全開です
「茉莉恵が俺を好きだというのは、違うと思うな。そもそも、彼女もこの縁談には乗り気じゃないんだ。それなのに、本心を語ってくれない……」

困ったような顔を浮かべる直哉さんの手に、私はそっと自分の手を重ねた。

「茉莉恵さんとは、お話合いが必要みたいですね。きっと、大変なことだと思います。でも、私は直哉さんを好きでいていいですか?」

そう聞くと、彼は真っすぐに私を見つめた。

「当たり前だ。陽菜のことを父に話して、茉莉恵との結婚のことを確実に白紙にしようと思う。きみのことは、どんなことをしても失いたくない」

「直哉さん……。嬉しいです。ほんの少しだけでも、疑ってしまってごめんなさい」

百パーセント彼を信じきれなかったことが、自分でも情けない。だけど直哉さんは、優しい笑みを見せて小さく首を振った。

「俺がすべて悪い。陽菜、俺と結婚を前提に付き合ってくれないか?」

思いがけない言葉を受けて、一瞬呆然とする。茉莉恵さんの話を聞いて不安だったのは、この先直哉さんと付き合えるかどうかということ。

彼との結婚を望むなんて、そんな勇気はなかった。

「私でいいんですか……?」

どこかふわふわした気持ちで言うと、彼は私の髪を撫でながら答えてくれた。

「そうだよ。俺は、陽菜がいいんだ。結婚を前提に付き合ってほしい」

「はい……」

直哉さんの気持ちが嬉しくて、涙が込み上げる。だけど、それを見られるのは照れくさくて、視線をそらしてしまった。

「陽菜、こっちを見て」

彼が優しく私の頬に触れ、そして唇を重ねる。二人の想いを確かめ合うように、何度も何度もキスを交わした──。
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