副社長は今日も庇護欲全開です
「は、はい。初めまして、下村陽菜と申します」
最初に声をかけられたのが自分ということもあって、すっかり動揺してしまう。すると、社長は大きくため息をついた。
「まったく、あなたといい住川くんといい、なんていうことをしてくれたんだ」
けっして、怒鳴るような口調ではないけれど、呆れたような言い方で気圧されてしまう。なにも言えない私の隣で、直哉さんが間を開けずに言った。
「お父さん、もうお話ししてあるとおり、茉莉恵さんとは結婚をしません。それは、茉莉恵さん本人も、同じ気持ちです」
私を庇うかのように、彼は一歩前へ出る。すると、住川さんも口を開いた。
「真中社長、そして竹田社長。誠に申し訳ありません。ですが……」
「謝罪の言葉は必要ない」
住川さんの言葉を遮るように、真中社長は言い放つ。竹田社長は、茉莉恵さんに呆れたような顔を向けた。
以前、私と会社で出くわしていたことは、忘れているようだった。
「まったく、お前の自覚の無さには呆れるよ。ずっと言っているはずだ。会社のために、直哉くんと結婚をしろと」
「そんな……。直哉くんだって、それを望んでいないのよ? 結婚でなくても、会社の利益は作れるでしょう?」
すでに涙目になっている彼女は、声が震えている。そんな茉莉恵さんの背中を、住川さんが優しく撫でていた。そんななかで、私はただ立っているだけ。
社長に圧倒され、なにも言えないことが情けない……。
「下村さん、あなたが直哉と別れると言ってくれれば、解決が早くなるんだがね」
詰め寄るように言われ、言葉を失う。直哉さんは、さらに一歩前へ出た。
「彼女に、そんな言い方をしないでほしい。俺たちは、別れるつもりはない」
語気を強める直哉さんに、社長も声を荒げた。
「直哉に聞いているんじゃない。下村さん、あなたに言っているんだよ」
最初に声をかけられたのが自分ということもあって、すっかり動揺してしまう。すると、社長は大きくため息をついた。
「まったく、あなたといい住川くんといい、なんていうことをしてくれたんだ」
けっして、怒鳴るような口調ではないけれど、呆れたような言い方で気圧されてしまう。なにも言えない私の隣で、直哉さんが間を開けずに言った。
「お父さん、もうお話ししてあるとおり、茉莉恵さんとは結婚をしません。それは、茉莉恵さん本人も、同じ気持ちです」
私を庇うかのように、彼は一歩前へ出る。すると、住川さんも口を開いた。
「真中社長、そして竹田社長。誠に申し訳ありません。ですが……」
「謝罪の言葉は必要ない」
住川さんの言葉を遮るように、真中社長は言い放つ。竹田社長は、茉莉恵さんに呆れたような顔を向けた。
以前、私と会社で出くわしていたことは、忘れているようだった。
「まったく、お前の自覚の無さには呆れるよ。ずっと言っているはずだ。会社のために、直哉くんと結婚をしろと」
「そんな……。直哉くんだって、それを望んでいないのよ? 結婚でなくても、会社の利益は作れるでしょう?」
すでに涙目になっている彼女は、声が震えている。そんな茉莉恵さんの背中を、住川さんが優しく撫でていた。そんななかで、私はただ立っているだけ。
社長に圧倒され、なにも言えないことが情けない……。
「下村さん、あなたが直哉と別れると言ってくれれば、解決が早くなるんだがね」
詰め寄るように言われ、言葉を失う。直哉さんは、さらに一歩前へ出た。
「彼女に、そんな言い方をしないでほしい。俺たちは、別れるつもりはない」
語気を強める直哉さんに、社長も声を荒げた。
「直哉に聞いているんじゃない。下村さん、あなたに言っているんだよ」