副社長は今日も庇護欲全開です
「なにか、質問とか聞いてみたいことがある?」

ボーッとしていると、副社長が視線を上げて私を見た。

「あ、あの……」

マズイかも……。上の空だったことに気づかれたのか、副社長の表情は硬い。

せっかく案が通って、こうやって経営側の人と話ができる貴重な時間なのに。

「すみません。ボーッとしていました」

怒られるならいいけど、出て行かされるかもしれない。小さくなっていると、副社長が静かに言った。

「緊張してる? 二人きりだもんな」

「いえ、そうじゃないんです。すみません、もっと集中します」

本当にいけない。自分に喝に入れて、背筋を伸ばす。すると、副社長はスッと立ち上がった。

「あ、あの副社長?」

もしかして、やっぱり怒らせてしまった? 焦りと緊張で呼びかけながら、立ち上がりかけたとき、副社長がゆっくり振り向いた。

「少しリラックスしようか? そのほうが仕事の話もスムーズに進みそうだ」
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