副社長は今日も庇護欲全開です
まさか、終電がなくなる時間まで食事……ということはないだろうし、十分電車に間に合うはず。

副社長の好意は嬉しいけれど、ここは丁重にお断りしよう。そう思っていたのに、副社長は車を走らせながら涼しげに言った。

「構わないよ。遅い時間に、きみ一人を帰すほうが心配だ」

「副社長……。ありがとうございます。とても、気を遣ってくださるんですね」

副社長が、どこに住んでいるのかは分からないけれど、私の自宅はホテルから決して近いわけではないのに。

当たり前のように送ると言ってくれた優しさに、心がほんのり温かくなる。

すると、副社長はハンドルを握り、真っ直ぐ前を向いたまま応えた。

「気を遣っているのは、きみのほうだ。と言っても、緊張するなと言うほうが無理かな?」

最後のほうは副社長が小さく笑い、私も控えめながらも微笑む。

きっとそれも、副社長の優しさだと感じるから。少しだけ、空気が柔らかくなったみたい……。

「お相手が、副社長なので。でも、こんな貴重なお時間が持てるのですから、なるべくたくさんお話をしたいと思います」

そう答えると、副社長は笑みを浮かべて一瞬私に視線を向けた──。
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