副社長は今日も庇護欲全開です
「副社長……」

私を緊張させまいとして、そう言ってくれているのかな……。

会社でのクールなイメージとは違って、素顔はとても優しいものね。

副社長に対して“対等”と思うには、おこがましいけれど、これからの時間を大切に過ごすためにも、好意を素直に受け入れよう。

せっかく誘ってもらえた時間なのだから……。

「下村さんは、まだお昼は食べていないよな?」

ふと聞かれ、恥ずかしく思いながら返事をする。

「はい……。起きてすぐ、支度をしたので……」

お昼どころか、朝も食べていない。だけど、副社長と一緒で緊張しているせいか、すっかり忘れていた。

「だよな。じゃあ、さっそく食事にしよう。ここは、俺が店を決めていい?」

「はい。もちろんです。なにからなにまで、すみません」

「構わないよ。俺も、だいぶ強引だしな」

クスッと笑った副社長に、私も控えめな笑みを浮かべる。

いろいろ気遣ってもらって、本当に申し訳ないな……。でも今、わくわくしているかも……。
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