副社長は今日も庇護欲全開です
「で、でも……」

昨夜だってご馳走をしてもらったのに、今日もって……。でも、断ったとしても、副社長は聞いてはくれないだろうし……。

チラリと彼に目を向けると、笑みを保ったままの顔で見つめられた。

照れくささで視線をそらしそうになりながらも、好意に甘えてばかりもいられないと自分に喝を入れる。

「副社長、ではお言葉に甘えさせていただきます。ですが……」

「ですが ……?」

小さく首を傾げる副社長の姿に、どこか胸がキュンとする。

ドキドキする気持ちを感じながら、小さく笑みを向けた。

「お茶は、私が出します。お勧めのカフェがあるんですよ」

「それは楽しみだな。じゃあ、お茶はきみの言葉に甘えることにしよう」

副社長はそう言って、穏やかに微笑んだ。

◇ ◇ ◇

「眺めなが最高ですね。水面がキラキラ輝いていて、眩しいです」

シーフード料理を堪能し、食後の紅茶を飲みながら窓から見える景色に目を向ける。

あとからお茶を……と提案した私のために、副社長はここでのスイーツを取りやめた。

「だろ? 夜は、店のライトアップもあって、昼間とは違った良さがあるんだ」

「そうなんですか……。夜にも来られたことがあるんですね」

恋人とかかな……。と、一瞬女性の存在が頭をかすめて、自分でも表情が曇ったのが分かる。

すると副社長は、小さく口角を上げて微笑んだ。

「仕事でね。下村さんは、誰か女性と来たんじゃないかと思っただろ?」
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