副社長は今日も庇護欲全開です
その一角に、オーナーが手作りで出すスイーツの店がある。

一番人気はシフォンケーキで、その他にもチョコレートケーキや、チーズケーキがあった。

「目立ってるか?」

店内は、五席テーブルがあるだけの小さなお店。運良く一席空いていたけれど、他は満席だった。

女子のグループとカップルがいるなかで、副社長は群を抜いて目立っている。

「とても目立ってますよ……」

自覚がないようで、副社長は私に怪訝な顔を向ける。そんな彼に、私は小声で答えていた。

「そうか? きみの気にしすぎだ」

ハハっと小さく笑った副社長は、手作りのシフォンケケーキに目を向ける。

コーヒーも自家焙煎だと聞いて、とても感心していた。

それにしても副社長は、自分が華やかさのある人だと思っていないのかな……。

お店に入ったときから、女性店員さんはもちろん、女性客の視線も一気に集めたのに……。

「そういえば、副社長は弟さんがお二人いらっしゃるんですよね? 皆さん、似ていらっしゃるんですか?」

一人は専務とはいえ、顔を知らなかった。もし、似ている方たちなら、三人並ぶとかなり目立つだろうな……。
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