副社長は今日も庇護欲全開です
「頼れる……か。そう思われているか、大人になった今は、怪しいところだが」

フッと笑う彼に、私は自然と言葉が出ていた。

「私が少しでも、副社長の癒しになれたらいいなって、思います……」

と言い終わってから、急に恥ずかしさが込み上げる。なにを言っているんだろう……。

副社長に、引かれてしまったかも……と不安を持ちつつ彼を見ると、穏やかな表情を崩されてはいなかった。

「ありがとう。充分だよ。きみと、会社でも会えるのはよかったと思っている」

「副社長……」

そうやって思ってもらえるだけでも、本当に嬉しい。

その後、副社長と過ごした土曜の午後は、穏やかでゆったりと流れていき、いつまでもこうしたいと思っていた。

◇ ◇ ◇

「私が副社長とお仕事ですか⁉︎」

月曜日の朝、課長から聞かされた言葉にア然とした。そんな私に、課長はどこか誇らしげに微笑んでいる。

「そうだよ。下村さんが出したコンペ案が、本格的に始動してきてね。形になるまで、きみの意見も取りいれたいと……」

そう副社長からの申し出があったらしく、定期的に顔を合わせることになった。

「ありがとうございます。すごく嬉しいです」

コンペの案が形になりそうなこともだけれど、副社長と仕事ができることに胸が高鳴る。

「というわけでさっそく、お呼びがかかっているから行ってくれるか?」
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