副社長は今日も庇護欲全開です
「そうか、すまなかったね直哉くん。私は今日は帰ろう。住川くんにも、よろしく言っておいてくれ」

「はい、竹田社長。本日は、ご足労をいただいたのに、申し訳ありませんでした」

やっぱり、どこかの企業の社長さんなんだ……。温和そうな方だけれど……。

「いや、アポなしで来た私が悪かった。今度、一緒に飲みにでも行こう」

「はい、よろしくお願いします」

副社長は竹田社長にお辞儀をすると、社長は私に目を向けることはなくエレベーターへ向かった。

アポなしで、副社長に会いに来るって、どんな用事だったんだろう。気にかかりながら、社長がエレベーターに乗ったのを確認して副社長へ声をかけた。

「課長から伺って、参りました」

土曜日のお礼どころじゃなさそう……。もしかして、竹田社長と大事な話だったのに、私のためにやめたとか?

硬い表情の副社長に、私はすっかり気圧されてしまった。

「呼び出してすまなかったな。入って」

副社長はドアを開けて、私を促す。控えめに入ると住川さんと目が合い、会釈をした。

そういえば、さっきの社長は、住川さんのこともよく知っているみたいだったな……。

「下村さん、これを渡したかったんだ。社内便だと遅くなるから、直接取りにきてもらった」

副社長室に入り、彼からクリアファイルを渡される。それは、一枚のA四用紙で、いくつか質問項目が書かれていた。
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