副社長は今日も庇護欲全開です
「きみに回答が求められている意見だ。アナログで申し訳ないが、明日中までに書けそうか? 俺の手元には、あさっての午前中に届けばいい」

ザッと見た限りでは、今日中に終われそう?

「はい、大丈夫です。できるだけ、急ぎますので」

「よろしく頼む」

私の答えを聞いた副社長は、自席に座りパソコンへ目を向けた。

きっと、忙しいんだろうな……。とても、会話ができそうにな雰囲気じゃない。

残念だけれど、今日は早々に退出しよう。

「それでは、失礼します」

副社長に声をかけると、彼は視線を向けることなく「お疲れ」とだけ答えた。

今日は素っ気ないな……。仕事が大変で、そっちに集中しているんだろうけど。

寂しさを覚えつつ、部屋を出る間際、副社長に声をかけた。

「土曜日は、ありがとうございました」

短いけれど、それだけは伝えたかったから。彼からの返事を聞く間もなく、副社長室を出る。

そして住川さんにも挨拶をすると、足早にオフィスに戻った──。

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