副社長は今日も庇護欲全開です
「いや、気にしなくていい。俺から誘っているのだから。じゃあ、土曜日に」

「はい。ありがとうございます」

小さく口角を上げた副社長に、私は控えめに微笑む。話がなにか気になるけれど、今話せないことなのだろう。

会釈をして副社長室を出ると、秘書の住川さんと目が合った。

「失礼します」

「お疲れ様です、下村さん」

今日の住川さんは、どこか憂いのある目をしている。仕事でなにかあっのかな……。

「住川さん、あまりお元気がないですね」

気になってしまい、つい声をかけてしまった。だけどすぐ、余計なことだったかなと反省したのは、一瞬だったけれど住川さんの視線が鋭かったから。

彼を気まずい思いで見ると、フッと笑われた。

「そうですか? すみません、ご心配をおかけして。私は元気ですよ。それより、下村さんは副社長と親しいんですか?」

「えっ⁉︎ な、なんでそう思われたんですか?」

まさか、今度はこっちが質問を受けることになるなんて……。

動揺する私に、住川さんはクスッと笑っている。

「副社長の雰囲気で……ですよ」

「雰囲気でですか……? 親しそうに見ていただけたのは、光栄です」
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